ニッサン情報 第12号
フィターゼとは? (その2)
フィターゼを給与する目的 〜その2〜
フィターゼを乳牛に応用するというアイデアが生まれてきました。乳牛にフィターゼを給与すると次のような効果が期待できます。
- 乳量が約1kg/日/頭増加します。
- バルク乳中のSCCが5〜10万/ml 減少します。
- 乾物摂取量が1kg/日/頭以上増えます。
フィターゼについての基本的なことは前号でお知らせしましたので、今回は乳牛に給与した場合の効果を具体的に述べることにいたします。
乳質を落すことなく乳量が増加します
1.フィターゼは 飼料効率を高めます
一般に、乳量を追いかけすぎると脂肪率やSNFが下がると云われています。しかしフィターゼは、乳質を確保しながら乳量を上げるという優れた性質を持っています。
飼料原料中にはフィチン酸が含まれていて、リン酸や亜鉛のほかに蛋白質の一部もフィチン態として結合されていて、不消化のまま排泄されてしまう部分があります。このフィチン酸は穀実類即ち濃厚飼料原料に多く含まれており、濃厚飼料を多給する高泌乳牛にとって、このことは重要な意味があります。
飼料原料中のフィチン態リン含有量 |
飼料名 |
全リン% |
フィチンリン% |
トウモロコシ |
0.27 |
63 |
マイロ |
0.26 |
70 |
大麦 |
0.33 |
63 |
大豆粕 |
0.62 |
50 |
ナタネ粕 |
1.11 |
65 |
綿実粕 |
0.99 |
71 |
グルテンミール |
0.32 |
61 |
フスマ |
0.96 |
79 |
米ぬか油粕 |
2.46 |
26 |
アルファルファミール |
0.25 |
0 |
例えばトウモロコシでは、含まれているリン中の63%がフィチン酸と化合しており、このフィチン酸に何がしかの蛋白質が結合していることになります。
フィターゼは、これまで十分に消化・利用されなかった蛋白質を結合から切り離して吸収可能な形にしますから、総エネルギーが増えて乳量増に反映し、しかも乳蛋白質率を上げることができるのです。
また、前号で説明しましたように、フィターゼを乳牛に給与したとき、ルーメン内でプロピオン酸生産量が多くなって乳量を増加させる体制が整うことになります。しかも酢酸の量は変わらないとされていますから脂肪率も維持できることになります。
2.野外試験の結果
群馬県K牧場で確認試験を行いました。真夏の暑い時期でしたが、試験区は対照区に比べて乳量も多く、健康状態も良好でした。
24頭の乳牛(分娩後経過日数平均152日)を用い、ミルクメーターによる正確な記録をとりました。フィターゼの給与開始後7日日頃から乳量が上昇しはじめ、試験期間中の乳量は対照に比べて平均1.5kg/日/頭増加したことが確認されました。なお試験期間中の飼料給与量は空試験期間と全く同一としました。
飼料量が同一で泌乳量が増えていますが、期間中の体重の変化の観察も併せて行いました。試験区の平均体重は、開始直前の570.6kgに比べて、35日後の終了時には586.2kgとなっており、期間中に0.45kg/日の割合で増加していました。
飼料の量を変えずに泌乳量が増加し、更に体重も理想どおりに増えたことは、フィターゼを給与したことによって飼料の利用効率がよくなっていることを証明したと考えてよいでしょう。
乳中SCCを下げることができます
1.フィターゼは 体細胞数を下げます
牛乳中の体細胞数は、乳房炎に罹った時に急上昇することは当然ですが、それ以外に気候、泌乳ステージ、乳量、産次、栄養状態、代謝病、感染症の罹患状態、ストレスなど要因は数多くあります。
フィターゼが乳牛の身体の中でどのように作用するのか、まだ詳しくはわかりませんが、これを給与した乳牛に体細胞数抑制効果がみられました。
2.野外試験の結果
埼玉県M牧場で確認試験を行いました。3月から試験を開始し、体細胞数が徐々に高くなると予想される6月まで3ヵ月間の観察を続けました。
16頭の牛群を用い、10日間隔でバルク乳のSCC検査を行いました。フィターゼ給与後5〜10日にはSCCが下がりはじめました。試験前には平均27万/ml 程度のSCCでしたが18万程度に下がり以後試験期間中に20万を越えたことはありませんでした。この牛群は試験期間終了後4ヵ月後にはSCC12万を維持しているとの報告を受けています。
表2フィターゼ給与による乳中体細胞数の抑制効果(n:16)
試験牛群の中には明らかに乳房炎に罹っている乳牛が2頭含まれており、これらの乳牛は5日間隔で分房ごとに採乳し検査を行いました。その結果、当然のことですが乳房炎罹患牛のSCCは変わりませんでしたが、フィターゼの給与によって乳房炎以外の諸原因によって高くなっていたSCCを有意に抑制することがわかりました。
この試験ではバルク乳のSCC30万が20万以下に改善されたことを示していますが、この他に40万バルク乳が給与後30万以下になったという試験結果もあります。
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