ニッサン情報 第9号
ディッピング(乳頭消毒)はなぜ必要か、ディッピング剤の種類とその効果
乳房炎原因菌はいつでも乳房内にもぐり込もうと機会をうかがっています
乳房炎の発生原因には、多くの病原微生物が関係しています。これらの微生物が乳房内へ侵入するのは殆どが乳頭管経由であり、侵入時期は搾乳時が圧倒的に多いのです。
乳頭管口は、通常は乳頭括約筋によって閉じられていますし、さらに乳頭管内にあるケラチン質が殺菌作用や栓をする働きをして、外部からの微生物の侵入を防いでいます。
しかし、搾乳時には乳頭管口が開き、ケラテン質の栓も乳で洗い流されるので、病原微生物にとっては乳房内部に入り込んで感染する絶好の機会なのです。
ディッピングは、乳頭に付着して乳房内への侵入の機会を窺っている微生物を殺して乳房内感染の機会を少なくし、乳房炎の発生を予防する重要な手段なのです。
乳房炎原因菌には伝染性乳房炎菌と環境性乳房炎菌とがあります
乳房炎は、その原因菌によって伝染性乳房炎と環境性乳房炎とに分けられます。乳房炎を効果的に防ぐには、それぞれに合った対策が必要となります。
伝染性乳房炎は、現に感染している乳房の乳汁やそれらに汚染された搾乳器具類あるいは搾乳者の手指などを介して、搾乳時に伝染していくことが多いのです。
また、搾乳後にもこれらの病原菌が乳頭に付着したままになっていることが考えられますので、ディッピングによってこれらの菌を殺すようにします。これがポストディッピングと呼ばれている乳頭消毒の方法です。
一方、環境性乳房炎は、牛舎の床や敷料、糞尿あるいは牛体など周囲環境中に常に存在する菌が原因となって発生します。
これらの菌は、搾乳と搾乳との間に乳頭を汚染させることが多く、通常搾乳時までそこに留まっているので搾乳直前に乳頭を消毒する、いわゆるプレディッピングが有効なのです。
プレとポストのディッピングの併用によって乳房炎羅患率を減らします
このように、牛の周りには乳房炎原因菌が常に存在し、感染の機会を窺っています。
これらの有害菌を牛の周囲から根絶することは不可能なことですが、侵入の入口となる乳頭だけはいつも清潔にして、少しでも感染の機会を少なくするようにしなければなりません。この目的のために行うのがディッピングなのです。
これまでに報告されている数多くの実験成績によれば、ポストディッピングは黄色ブドウ球菌などが原因の伝染性乳房炎の防除には極めて有効で、新しい感染を約50%程度減少させることができた、としています。
しかしながら、環境性乳房炎菌に対してはあまり効果がなかった、とされています。そこで考えだされたのが、搾乳前に行うプレディッピングです。環境性乳房炎発生に悩まされていた農場がこの方式を採用した結果、その発生が劇的に減少しました。
この方式とポストディッピングとを組み合わせて行った実験成績によると、大腸菌などの環境性乳房炎菌の新しい感染率を約50%減らすのに成功したと報告されています。したがって、プレディッピングは、今後かなり普及すると思われます。
ディッピング剤にも様々なものがあります
現在、我が国で多く普及しているディッピング剤としては、主原料がヨウ素系のものと、ついで脂肪酸系のものが使われていますが、そのほかにクロロヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、次亜塩素酸ソーダなども一部では用いられています。
最も多く使われているヨウ素系製品は、概して殺菌力は強いが大事な乳頭や乳搾者の手指が荒れやすい欠点があります。
また何よりも、乳頭に残留したヨウ素が牛乳中に混入すれば、牛乳消費者である人の健康に影響を与える恐れが指摘されています。
この点脂肪酸系のディッピング液は、第一に、食品添加物としても使われている脂肪酸が主成分なので安全性に問題がないこと、第二には、牛や人の皮膚にやさしく、ヒビ割れを防ぐだけでなく滑らかにする効果があります。
また、抗菌性試験の成績から、この脂肪酸系ディッピング液は乳房炎菌に対してヨウ素剤とほぼ同じような抗菌力を示すことが分っています
このように、脂肪酸系のディッピング液はポストディッピング用としては勿論のこと、今後はプレディッピング用の安全な資材として、大いに利用されることになる、と考えられます。
- 中鎖脂肪酸と乳酸の組み合せで、細菌の活動を抑制します。
- 乳頭のひび割れや荒れを防ぎ、搾乳作業がスムーズに進行します。
- 乳頭に糞やコミがつきにくく、搾乳前の乳頭清拭が簡単にすみます。
- 適正濃度に調整してあり、そのまま使えます。
- スプレー、ディップカップのどちらでも使えます。
- 不快な臭いがなく、作業する人の手指の荒れも解消します。
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