ニッサン情報 第3号
脂肪酸-乳酸配合ディッピング液の効果


 米国で実施された脂肪酸-乳酸配合ディッピング液を用いた乳房炎予防試験の概略をご紹介します。

 脂肪酸と乳酸を主成分とするディッピング液が、黄色ブドウ状球菌及び無乳性連鎖球菌を起因菌とする乳房炎に対して、どのような効果がみられるかという評価試験が行なわれました。その結果、黄色ブ菌及び無乳性連鎖球菌を起因菌とする乳房炎の新感染の減少率は、それぞれ67.8%及び77.2%であり、対照区に対して有意の効果が認められました。又この結果は、ヨウ素系のディッピング液の効果に勝るとも劣らないものでありました。

 21日の試験期間中、ミルカーのライナーを外した直後に全乳頭を黄色ブ菌と無乳性連鎖球菌を含む強制感染液に乳頭を浸漬し、その後各供試牛の2乳頭のみを脂肪酸-乳酸配合ディッピング液に10〜15秒間浸漬して試験区とし、残りの2乳頭はディッピングを行わないまま対照区としました。用いられた強制感染液は、各菌の最終濃度が黄色ブ菌と無乳性連鎖球菌それぞれ5千万、5千7百万CFU/mLでした。試験結果を下表に示します。


黄色ブ菌と無乳性連鎖球菌に及ぼす試験液の効果
起因菌及び
処置グループ
試験開始時の
適正乳房数
新規感染乳房数
分房数
減少率
1週
2週
3週
4週
黄色ブ菌象区
ディッピング区対象区
211
199
7
14
18
74
16
32
41
120
19.4
60.3
67.8a)
-
無乳性連鎖球菌
ディッピング区対象区
211
199
3
8
2
20
5
13
10
41
4.7
20.6
77.2b)
-


 この試験期間中は、日平均気温が22〜34℃の高温期間であったため、対照区の感染率が予測よりも高かったのですが、試験区の乳房炎感染の減少率では黄色ブ菌に対しては67.8%、無乳性連鎖球菌では77.2%となり、対照区に比べて有意に低くなっています。参考までにヨウ素系ディッピング剤による同様試験の成績は、それぞれ70.0%、72.5%となっており、感染実験における脂肪酸系のディッピング液の乳房炎予防効果は、ヨウ素系製剤よりもむしろ優れていると述べています。

 脂肪酸中のラウリン酸(乳頭中のケラチン層に多く含まれている)は、グラム陽性菌に最も効果があり、溶血性連鎖球菌に対しての殺菌効果は既に認められております。この試験に用いたラウリン酸グリセリンエステルは、遊離型脂肪酸よりも更に大きな細菌抑制力をもっていることも報告されています。

 搾乳後にディッピングを行うことは、乳房炎予防のための必須処置です。しかしヨウ素系のディッピング液は、牛乳中へのヨウ素残留という人の健康にとって好ましくない事態を生じることから、ヨウ素剤を用いたプレディッピングは禁止又は自粛勧告を出している国もあり、ヨウ素系に代る人の健康に無害な脂肪酸系のディッピング液への期待が高まっています。又、脂肪酸系製品には乳頭表皮に対する刺激がなく、取り扱う人の皮膚にもやさしいというメリットもあるということを付け加えておきます。


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